天使の言葉で書かれた「ロガエスの書(スローン手稿3189)」とは~イギリスきっての錬金術士・魔術師ジョン・ディーによる未解読文書 | 謎カレンダー

天使の言葉で書かれた「ロガエスの書(スローン手稿3189)」とは~イギリスきっての錬金術士・魔術師ジョン・ディーによる未解読文書

7月13日
「ロガエスの書(Liber Loagaeth)」は、16世紀末に書かれた未解読の文書である。
著者はジョン・ディー博士。イギリスのロンドンで1527年7月13日に生れた彼は錬金術師、占星術師、数学者であり、イギリス女王エリザベス一世の占い師をつとめたり、当時のイギリスきっての「魔術師」としても知られている。
その彼の著書である「ロガエスの書」はヴォイニッチ手稿と並ぶ、未解読の謎の文書とされる。
「天使の言葉」で書かれたという「ロガエスの書」とは?

イギリスの天才学者ジョン・ディ博士


ジョン・ディーとは、中世イギリスに実在した学者である。(写真)
15歳でケンブリッジ大学に入り、19歳にはギリシャ語の助教授になったというほどの俊英であった。魔術に関心を持ち始めたのはこの頃と言われる。彼の占星能力は、上流階級の間で評判を呼び、これが縁となってイギリス王室に仕える。

当時、イギリスのエリザベス女王は大英帝国を打ち立てるためにその敵であるスペインの計画や戦略に関する情報を必要としていた。
ジョン・ディーは1588年イギリス海軍とスペインの無敵艦隊の決戦時に気象学の科学的分析により、嵐を予言し、攻撃を待つようにアドバイスし、嵐で疲弊したアルマダ艦隊はイギリス海軍の攻撃を受けて壊滅状態になった。
その嵐を呼び寄せたのが、ジョン・ディー博士の力によるものだと信じる人がいたというエピソードもある。



そのエピソードを元にシェイクスピアが、「テンペスト(嵐)」を創作し、その登場人物プロスペローはジョン・ディー博士がモデルとなったといわれている。
またエリザベス女王の戴冠に最も縁起の良い日を進言し,「大英帝国」という言葉を広めた人物とされており、探検家たちに航海術を教え,東洋への北東航路と北西航路の発見に力を入れさせたという。

このように様々な分野で活躍をした学者だったが、彼が有名になったのは当代きっての
魔術師だったからでもある。

天使の言語「エノク語」とは?



ディーが天使を召喚する魔術の実験を始めたのは1580年からのことであったといわれる。
その後、1582年からエドワード・ケリーという男がディーの助手となった。
「シューストーン」という水晶玉のような道具の中に、大天使ウリエルを見たというケリーは天使から特殊な言葉を教わり、それをディーが描きとめる形で、二人は共同作業をしていった。
1583年3月26日ケリーはこの言語の特徴である21文字(写真上)のアルファベットの水晶球幻視を報告し、それからエノク語として知られることになる言語の受信が始まった。

ケリーは文書偽造の前科を持つ怪しい人物だったが、それでもケリーが助手として必要とされていたのは、ディーが持っていなかった「霊的な存在を視る」能力をケリーが備えていたからだとされる。
また、ディーの研究者達は、オカルティストであれ、オカルトを信じない学者であれ、「ケリーが幻視の才能を持ち、幻視を行っていたのは確実」と言う点で意見は、ほぼ一致する。

こうして、ディーは霊視者ケリーの協力によって安定して長らく天使と交信できるようになり、結果としてそうして受信したものの中に「エノク語」すなわち「天使の言語」が含まれていたという。



天使の言語や大洪水以前の言語という概念はディーの時代、よくあるものだった。
その重要性は、仮に天使の言語を知ることができれば、天使と直接交信することができ、かつそれによって宇宙全体とも交信できるのではないかとされていたのだ。

こうして、エノク語とそれを基盤とするエノク魔術の体系が作られた。

「ロガエスの書(Liber Loagaeth)」とは



ディーの日誌によるとエノク語(天使語)は神が世界創造に使用した言語で、神や天使と会話するためにアダムが使用し、そして万物全ての存在を名づけたものであると想定されている。
アダムはエデンの園からの追放で言葉を失い、そしておぼろげな天使語の記憶を元に原ヘブライ語を作り出したとされている。

(写真:エノキアンタブレット)

こうしてケリーが受信した「エノク語」をまとめたものが「ロガエスの書」となった。

この本は天使言語による49の「コール」(召句) ないし祈祷文から成っていたが、95の大きな文字表も含まれ、各文字表は49x49の文字だらけの方陣(写真)であった。
この方陣は「エノキアンタブレット」と呼ばれ、現在の西洋魔術でも、精霊を召喚するときに独特の呪文を唱えるが、それらはこのエノキアンタブレットから得られたものだという。

なお、天使たちがわざわざこの本のテクストを翻訳することは一度もなかったという。『ロガエスの書』には数千の未定義の単語が含まれており、現在の大英図書館スローン文庫の「手稿3189番」がこれに当たるとされる。

果たして本当に天使の言葉だったのか?


エノク語が本当に天使からもたらされた言葉なのか、それともディーとケリーによるねつ造なのかは議論の分かれるところだとされる。
「ロガレスの書」はエノク語の英訳は存在せずに、祈祷文も方陣の内容もわからないままだったが、その1年後に英訳付きの「天使の鍵」と呼ばれる情報をケリーが得たことによって、方陣の内容が解き明かされていくことになったという。

また、エノク語は後代の研究により、単なるでたらめではなく、それなりに理にかなった構造(ただし、それは英語によく似ているとも言われる)の言語であることが判明しているという。


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