西暦775年のミステリー・世界中の歴史書に記されていた「空に浮かぶ赤い十字架」の謎~その時宇宙で何が起こったのか?

2019/09/11

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6月3日
2012年のこの日、ある日本人大学院生の論文が科学雑誌「Nature」に掲載され、世界の科学者に衝撃を与えた。西暦774年から775年にかけての1年間、自然界にはほとんど存在しないという「放射性炭素14」の濃度が、その1年に限って過去3,000年間で最大級の急激な上昇をしていたというのだ。
これはその年、大量な宇宙線が地球に降り注いだことを意味しているという。

しかもその年をさかのぼると、ヨーロッパの古文書に「空に日没後、赤い十字架が現れた」といった記述が見つかるなど、確かに何らかの天空の異変があったらしいことが明らかになってきたという。

こうして今から1200年以上前の西暦775年は、世界の天文学者の注目を集める年となった。
はたして「西暦775年のミステリー」とは?宇宙でそのとき、何が起こっていたのか?






屋久杉が教えた「放射性炭素14」の急上昇


「炭素14」は、宇宙からやって来る高エネルギーの宇宙線が、大気分子と衝突して作られるという。
宇宙線はいつも降り注いでいるが、私達には感じ取ることができない。
しかし、この宇宙から飛んで来た、高エネルギーの粒子(宇宙線)は大気を通り抜け、地球にたしかに降り注いでいる。


(実際の実験に使われていた屋久杉)

この「炭素14」は、大木の年輪に含まれる量を調べる事で、1年ごとの地球に降り注いだ宇宙線の量がわかるという。

そこに着目した名古屋大学の大学院生が、博士論文のために、屋久杉の年輪に含まれる炭素14の濃度を分析していたところ「ある年に他に例を見ないほど(通年の20倍)の濃度の急上昇」が認められたのだ。
それが「西暦774年から775年」にかけてだった。

炭素14の濃度が短期間にこのような急上昇したということは、宇宙線が地球に大量にもたらされるような「謎の事件」があったことを意味している。
こうして、この論文が発表されると、世界中でこの「西暦775年のミステリー」について、検証・推理がなされるようになった。

世界中で確認された「西暦775年の異変」~天の赤い十字架


この現象がもし今起きたとしたら、ほぼすべての電子機器が使えなくなり、社会の大混乱が予想されるという。それほど特異な現象であるため、世界中であらゆる検証がなされた。

まず、ドイツにあった古い木の年輪でも炭素14が、774年~775年に急増していることが確認された。
さらに、南極にあるアイスコーン(氷の塊)でも西暦774年に宇宙線が大量に降り注いできたという証明となる「ベリリウム10」の数値が急上昇していたという。

さらに思いがけないところに、この「宇宙の謎の大事件」の証言が残されていることがわかったのだ。


774年、イギリスで日没後の空に「赤い十字架」が出現したという記録を、カリフォルニア大学サンディエゴ校の学生がある歴史書から発見した。
その歴史書とは、「アングロサクソン年代記」(写真)で、これは古代から中世にかけてイギリスの歴史を知る貴重な資料であり、774年に戦いがあった時、天に赤い十字架が現れ、さらに大地に見事な蛇が現れたという記述があったという。

さらに、ドイツの修道書を分析すると、776年に赤く燃え盛る2枚の楯が、教会の上を動いていくのを見た、という記述も見つかった。

さらに当時の中国(唐)の天体観測の記録である「新唐書」にも
「大暦2年(767年)の7月、太陽の脇に青と赤の気が有り、長さが四丈ほど。太陽の上に赤い気があり、長さが2丈ほど。9月にも太陽に青と赤の気が。3年正月には太陽に黄色の冠のような気があり、赤と青の気もまわりにあった。」という記録があったという。(この日本と中国の古文書に関しての興味深い考察は→コチラ


そのとき、宇宙では何が起こったのか?

(超新星爆発の残骸とされる「カニ星雲」)

このように西暦775年ころ、「宇宙で何か大きな事件が起こった証拠」というのが、屋久杉の年輪だけでなく、歴史書の中にまで見つかったため、世界中でその「原因」に関していろいろな説があげられてきた。

・超新星爆発説 
超新星爆発は、太陽の数倍以上の大きい星が寿命が尽きて大爆発し、大量の宇宙線が放出される現象である。
空は雲で覆われているので、光が十字架のように見えたという説明にもなる。しかも、肉眼で見えたということは、とても明るい現象だったはずで超新星爆発なら、可能性があるのではとされた。

しかし、超新星爆発なら痕跡(残骸)が残っているはずなのに、超新星の残骸が観測されていない。

(太陽フレア)
・太陽フレア説
太陽表面では、太陽フレアという爆発が起こっている。そのフレアによって大量の宇宙線が放出されるという。古文書の「白い蛇」や「赤い盾」は太陽の表面の爆発(太陽フレア)が地球に届いて、局地周辺でオーロラが見られたため、そう書かれているのではという説。

これは、一番有力な説ではあるが、そのためには観測史上最大の太陽フレアの10倍もの規模が必要となる。これは途方も無い数値であるという。

(ガンマ線バースト)
・ガンマ線バースト説
ガンマ線バーストは「宇宙でもっとも激しい爆発」といわれ、中性子星が互いにまわって、強い重力によって激しく衝突し、ガンマ線バーストが起きるとされる。そのとき、宇宙線のなかでも高エネルギーのガンマ線が大量に放出されるため、775年にガンマ線バーストが起きたのでは、という説もある。

しかし、ガンマ線バーストは、広い宇宙でまれにしか起こらないので、私たちの銀河系ではまだ一度も生じたことがないとされている。また、一つの銀河で1000年に一度、起きるか起きないかの現象のため、たまたま1200年前に起こったとは考えにくい。

2013年、太陽フレア説がより有力になる


2013年、太陽フレア説を支持する新たな記録が発見された。
太陽フレアが原因だった場合、775年前後に世界各地でオーロラが見えたに違いないとされる。
それを裏付けるような記述が、中国の古文書「旧唐書」で見つかっている。

「夜 東の方角の月の上のあたり御者座から双子座、海蛇座にかけて10あまりのまるで絹のような光沢のある白い光の帯が現れた」

この記述はまさにオーロラとも思える記述だ。

また、前述のイギリスの古文書にあった「大地に現れた見事な蛇」もオーロラの可能性があり、さらにドイツで見れられた「赤い2つの盾」も赤いオーロラとも考えられる。


オーロラが揺れ動くのが、当時の人には見事な蛇に見えたのでは、というのだ。
さらに歴史書を調べると、当時、オーロラが各地で観測された証拠が見つかり、当時、太陽フレアの活動が活発だったのではと考えられるという。

このようなことから、太陽フレア活動の説が有力とされているが、大量の宇宙線を降らせた原因は何だったのかは、今も特定されていない。

2013年4月には、775年だけでなく「西暦994年」にも同じように炭素14が急上昇したという痕跡が発表された。
次に、もし現代に起これば、地上のネットワークは完全に機能しなくなってしまうという。
果たして、この原因は一体なんなのか?そして、次に起こるのは果たしていつなのか?



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